心理的安全性ストーリー

「これも私の仕事?」曖昧な責任範囲にモヤモヤしていた私が、安心して業務に取り組めるようになった話

Tags: 心理的安全性, コミュニケーション, チームワーク, 役割分担, 不安解消

「これ、私の仕事だっけ?」あのモヤモヤの正体

日々仕事に取り組む中で、「これって、誰がやるんだろう?」「どこまでが自分の担当なんだろう?」と、指示が曖昧でモヤモヤした経験はありませんか。特に複数の人が関わるプロジェクトや、新しい業務に挑戦する際には、責任範囲が不明確になりがちです。

私も、以前はこうした曖昧さに常に不安を感じていました。上司からの指示が「〇〇の件、よろしく」といった大まかなものだったり、チーム内で誰かがやるだろうと思って放置されていたタスクがあったりすると、「勝手に進めて失敗したらどうしよう」「でも、誰に聞けばいいんだろう…」と、胃のあたりが重くなるような感覚に襲われていたのです。

こうした状況が続くと、必要以上に周りの顔色をうかがったり、本来やるべき業務に集中できなかったりします。もしあなたも、同じような「曖昧さによる息苦しさ」を感じているとしたら、それはもしかしたら、心理的安全性が少し足りていない環境にいるサインかもしれません。今日は、そんな私がどのようにして、曖昧さからくる不安を乗り越え、安心して業務に取り組めるようになったのか、その体験をお話ししたいと思います。

トラブルが教えてくれた「曖昧さの怖さ」

私が特に「このままではダメだ」と感じたのは、あるプロジェクトでの出来事がきっかけでした。複数の部署が連携して進めるタスクで、誰かが担当するはずだった「最後の確認作業」が、結局誰も担当しないまま見過ごされてしまったのです。幸い大きな問題には至りませんでしたが、後から原因を追究する際に、チーム内で「あれは〇〇さんがやると思っていた」「いや、私の理解では△△さんの担当かと」といった会話が交わされ、お互いに責任を押し付け合うような、なんとも言えない嫌な空気が流れました。

この時、私は強く感じました。「この曖昧さが、私たちのチームを弱くしている」と。そして、この曖昧さが、私自身が「確認していいのかな」「これは自分の範囲外かも」と発言をためらっていた原因でもあるのだと気づきました。失敗を恐れる以前に、自分の役割すら明確でないことへの不安があったのです。

小さな「確認」が扉を開いた

この出来事を経て、私はチームの曖昧な空気を変えたいと強く思うようになりました。といっても、大げさなことはできません。まずは、自分にできる小さな一歩から始めることにしました。

私が始めたのは、「曖昧な指示に対して、自分の理解と担当範囲を声に出して確認する」ということです。

例えば、上司から指示を受けた際、以前なら「はい、分かりました」とだけ答えていたのを、「この件は、〇〇(内容)を、私が△△(方法)で進めるということで合っていますか?」「期日は〇月〇日まで、で認識しています」のように、少し具体的に自分の理解を言葉にするようにしました。

最初は少し勇気が必要でした。「こんなこと、わざわざ聞かなくても」「自分で考えろって思われないかな」という不安もありました。しかし、不思議なことに、確認することで上司も「あ、そこが伝わっていなかったか」「その解釈で大丈夫だよ」と補足してくれることが増え、結果的に手戻りが減りました。

また、チーム内のチャットでタスクの進捗を共有する際も、「本日は、〇〇のタスク(担当:佐藤)を進めます。不明点があれば、△△さんに相談させてください」のように、「誰が」「何をやるか」を意識的に明記するようにしました。

こうした小さな行動を繰り返すうちに、チーム内に少しずつ変化が見られました。他のメンバーも、自分の担当タスクをチャットで共有したり、他の人が困っていそうな時に「これって〇〇さんの担当でしたっけ?」「何か手伝うことありますか?」のように声をかけたりするようになったのです。

役割の明確さが生む「安心感」と「信頼」

「誰が何をやるか」が明確になるにつれて、チーム内のモヤモヤは少しずつ晴れていきました。お互いの役割が「見える化」されたことで、安心して自分の仕事に集中できるようになりましたし、「これは誰の仕事?」と悩む時間が減りました。

何より大きかったのは、問題が発生した時の雰囲気の変化です。以前のように「誰の責任だ」という空気ではなく、「なぜこういうことが起きたんだろう?」「次にどうすれば防げるだろう?」と、原因と改善策に焦点を当てて建設的に話し合えるようになったのです。これは、誰もが「自分だけが責められることはない」という安心感を持てるようになったからだと感じています。

役割の明確化は、単に指示を分かりやすくするだけでなく、「あなたのこの部分に期待していますよ」「あなたの仕事は重要ですよ」というお互いへの信頼を示す行為でもあります。この信頼感が、結果としてチーム全体の心理的安全性を高め、各自が安心して自分の役割を果たし、チームに貢献できる環境を作り出していくのです。

まとめ:曖昧さへの一歩が、安心への道となる

もしあなたが今、職場で指示の曖昧さや責任範囲の不明確さにモヤモヤを感じているなら、それはあなた一人の問題ではありません。そして、その曖昧さは、チームの心理的安全性を少しずつ損なっているのかもしれません。

環境を変えるのは、小さな一歩からで大丈夫です。指示を受けた時に少しだけ具体的に聞き返してみる、自分の担当を簡潔に共有してみる、他のメンバーの仕事に少しだけ関心を持ってみる。こうした「確認」や「共有」の行動は、最初は勇気がいるかもしれませんが、曖昧さからくる不安を減らし、チームにお互いを信頼し合う安心感をもたらす第一歩となります。

安心して自分の役割を果たせる環境は、個人のパフォーマンスを高めるだけでなく、チーム全体の力を引き出します。あなたも、曖昧さへの小さな一歩を踏み出して、より安心して働けるチームを築いてみませんか。あなたのその一歩が、周りの人々の安心にも繋がっていくはずです。