サイロ化していたチームに風穴が開いた話 ~情報共有が苦手だった私が意識したこと~
情報、共有できていますか? チーム内の「壁」に感じていた息苦しさ
私たちのチームは、決して仲が悪いわけではありませんでした。でも、どこか「壁」を感じていたのです。特に情報共有の面で。
プロジェクトの進捗や、顧客からのちょっとした問い合わせ、気づいたリスクの芽。どれもチーム全体で共有すべきことのはずなのに、なぜか報告が遅れたり、そもそも共有されなかったりすることが常態化していました。
「こんな細かいこと、言わなくてもいいか」 「忙しそうだから、後で聞こう」 「もし間違った情報を伝えたらどうしよう」
私自身も、そう考えてしまうことがよくありました。結果として、二重作業が発生したり、後から問題が発覚して慌てて対応したり。チーム全体の効率が悪いだけでなく、メンバー間の信頼にもかすかな影が落ちているように感じていました。それは、まさに「サイロ化」という状態でした。それぞれのメンバーが個別のタスクに閉じこもり、必要な情報がスムーズに行き来しない。この状況に、私は漠然とした息苦しさを感じていました。
「どうせ伝わらない」を乗り越えて、小さく始めてみた情報発信
私は元々、あまり積極的に発言するタイプではありませんでした。特に、自分にとって「些細なこと」だと思える情報は、チーム全体に共有する必要があるのか判断に迷い、結局言わないことが多い傾向にありました。会議で議事録を取っていても、自分が担当している部分以外の詳細にはあまり触れず、必要最低限のことだけをまとめていました。
しかし、情報共有の滞りによる非効率を目の当たりにするうち、「このままではいけない」という思いが強くなりました。大きな改革は難しそうでしたが、まずは自分にできることから始めてみようと決めました。
意識したことは、主に二つです。
一つ目は、「どんなに小さく思えることでも、もしかしたら誰かの役に立つかもしれない、という視点を持つ」ことでした。例えば、顧客からの質問で新しい知見を得たら、チャットの共有チャンネルに「〇〇さんからの質問で、△△ということが分かりました。ご参考まで」と投稿するようにしました。最初は少し勇気がいりましたが、「どうせ誰にも見られないだろう」と思いながらも、投稿を続けました。
二つ目は、「相手が情報を『受け取りやすい形』を意識する」ことでした。議事録は、自分が担当していない部分でも、聞いたことや感じた疑問点などを丁寧にメモし、「後で〇〇さんに確認します」と補足を入れるなど、よりチーム全体で活用できるような内容を心がけました。日報も、単なるタスク報告だけでなく、作業中に気づいた課題や、個人的に調べたことなども添えるようにしました。
最初は、投稿しても何のリアクションもないことがほとんどでした。それでも、「誰かの役に立つかもしれない」という可能性を信じて、発信を続けました。変化が見え始めたのは、数週間経ってからのことです。
小さな一歩がチームに開けた「風穴」
ある日、私がチャットに投稿した顧客からの質問に関する情報について、別のメンバーから「ありがとう、まさに知りたかった情報です!」と反応がありました。その時は、本当に嬉しかったです。「自分の発信が、誰かの役に立ったんだ」と実感できた瞬間でした。
それから少しずつ、チームの空気感が変わり始めました。私が情報を発信すると、他のメンバーも関連する情報を共有してくれるようになったのです。「そういえば、私も似たような経験があります」とか、「それなら、この資料も参考になるかもしれませんね」といった具合です。
議事録も、他のメンバーが自分の担当箇所の補足を書き込んでくれるようになったり、疑問点を質問してくれたりするようになりました。以前は一方的な報告書に近かったものが、少しずつ「チームで情報を育てていく場」に変わり始めたのです。
最も大きな変化は、会議での発言が増えたことです。以前は、知っている情報でも「今言うべきか」「それは関係ないか」とためらってしまいがちでしたが、積極的に情報共有を試みる中で、「もしかしたら、この情報も必要かもしれない」と思えるようになりました。そして、実際に発言してみると、それが議論の糸口になったり、他のメンバーの気づきに繋がったりすることが増えました。
もちろん、すぐに全ての情報が完璧に共有されるようになったわけではありません。今でも課題はあります。しかし、「情報を共有することに価値がある」「些細なことでも伝えてみよう」という意識が、チーム全体に芽生え始めたように感じています。
この変化は、心理的安全性と深く繋がっているのだと思います。私が小さな情報発信を始めたことで、「このチームでは、情報共有を歓迎してくれるんだ」「自分の気づきにも価値があるのかもしれない」と感じられるようになりました。そして、私が安心して情報を共有する姿を見た他のメンバーも、少しずつ安心して自分の持つ情報を開示できるようになったのではないでしょうか。
「どうせ伝わらない」という諦めや、「失敗したくない」という恐れから生まれる情報の壁は、心理的安全性が育まれることで、少しずつ低くなっていくのだと学びました。
あなたの小さな「共有」が、チームを変えるかもしれない
もし、あなたのチームも情報共有に課題を感じているなら、まずはあなた自身が小さな一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
- 日々の業務で気づいた「そういえば」という情報を、チームチャットに投稿してみる
- 会議で、議事録には書かれていないかもしれないと感じたことを補足してみる
- 誰かの発言や共有に対して、「ありがとう」「参考になります」といったポジティブな反応を示す
これらは、決して難しいことではありません。小さな、勇気が必要な一歩かもしれませんが、その一歩がチームの情報共有に対する意識を変え、「このチームでは情報を安心して共有できる」という心理的安全性を育むきっかけとなるかもしれません。
かつて情報共有が苦手だった私が、今ではチームの情報ハブのような存在になれたのは、ほんの少しの勇気と、継続する中で得られた小さな成功体験があったからです。
あなたの小さな「共有」が、チームの「サイロ」に風穴を開け、よりスムーズで、より連携の強いチームへの変化を呼び込む可能性を秘めているのです。応援しています。