いつも「だいたい賛成です」と言っていた私が、チームで「違う視点」を歓迎されるようになった話
職場の「なんとなく賛成」に慣れていませんか?
私たちは日々、職場で様々な判断や提案に触れています。会議で新しい企画が発表されたり、チームの方針が示されたり。そんな時、「特に異論はありません」「だいたい賛成です」と答えることが、無難で波風を立てない最善策のように思える瞬間はないでしょうか。
かつての私もそうでした。周りの意見に反対したり、違う視点から疑問を投げかけたりすることは、なんだか面倒なことになるような気がしていました。「生意気だと思われたらどうしよう」「もし間違っていたら恥ずかしい」「議論が長引いてしまうのは避けたい」...。そんな思いが頭をよぎり、結果として「だいたい賛成です」という言葉に落ち着いてしまうのです。
表面上は円滑に進んでいるように見えても、心の中には小さなモヤモヤが残ります。本当にこれで良いのだろうか、何か見落としている点はないだろうか、自分の感じている違和感は気のせいだろうか。そして、何より、自分の意見を素直に表現できないことに対する、漠然とした息苦しさです。
こうした経験は、もしかしたらあなたにもあるかもしれません。ここでは、そんな私がどのようにして、自分の「違う視点」をチームの中で歓迎されるようになったのか、その体験をお話ししたいと思います。
チームの沈黙、そして小さな一歩
私が以前いたチームでは、新しいアイデアや方針が出た際に、活発な議論が起きることはほとんどありませんでした。誰かが提案し、リーダーが承認すれば、異論が出ることもなくすんなりと進む。一見効率的に見えますが、どこか「言っても変わらない」「言わない方が楽」といった諦めのような空気が漂っていたように思います。私もその空気に流され、何か意見があっても心の中にしまっておくのが常でした。
現在のチームに移ってからも、しばらくは以前の癖が抜けませんでした。会議では必要な情報だけを伝え、意見を求められても当たり障りのない返答をする。「だいたい賛成です」という言葉は、私の口癖になっていました。
転機となったのは、あるプロジェクトでのことでした。これまでのやり方ではどうもうまくいかない、という壁にぶつかったのです。チーム全体に閉塞感が漂い、誰も有効な打開策を見つけられずにいました。
その時、チームリーダーが言いました。「今までの考え方にとらわれず、どんなに突拍子もないと思える意見でもいいから、みんなで自由にアイデアを出してみよう」と。そして、こう付け加えたのです。「誰かの意見を否定したり、笑ったりするのは絶対にやめよう。どんな意見にも、必ず何か良いヒントが含まれているはずだから」。
その言葉に、私はほんの少し勇気をもらいました。ずっと心の中にあった、しかしこれまでは「そんなこと言っても無駄だろうな」と思っていた、一つの疑問を口にしてみることにしたのです。それは、他のメンバーが当然だと思っている前提条件に対する、素朴な疑問でした。
発表するのは、とても緊張しました。周りの反応が怖かったからです。しかし、誰も私の意見を否定しませんでした。むしろ、リーダーは真剣に耳を傾け、「なるほど、その視点はなかったね。もう少し詳しく聞かせてもらえる?」と言ってくれたのです。他のメンバーも、私の疑問をきっかけに、それぞれが感じていた違和感や新しいアイデアを話し始めました。
「違う視点」がチームにもたらしたもの
あの時、私の小さな一歩が、チームの空気を少しずつ変えていくきっかけになったと感じています。私の疑問は、直接的な解決策ではなかったかもしれません。しかし、異なる角度からの視点を提供したことで、それまで気づかなかった問題点や、新しい解決策の可能性をチームにもたらすことができたのです。
その後、私は以前より積極的に自分の意見を言うようになりました。もちろん、全ての意見が採用されるわけではありませんし、時には別の意見とぶつかることもあります。でも、チームのメンバーは私の意見を頭ごなしに否定せず、なぜそう思うのか、どんな根拠があるのか、丁寧に聞いてくれるようになりました。私もまた、他のメンバーの意見を以前より真剣に聞くようになりました。
異なる意見が出ても、それは個人的な攻撃ではなく、より良い結果を目指すための建設的な意見交換なのだと理解できるようになったからです。会議での議論は以前より時間がかかるようになったかもしれませんが、その質は格段に上がりました。多様な視点から物事を検討できるようになった結果、よりリスクの少ない、あるいはより革新的なアイデアを採用できるようになりました。
何よりも変化したのは、チーム全体の雰囲気です。お互いの意見を尊重し、「違う視点」を面白がれるようになりました。失敗を恐れずに新しい方法を試せるようになり、「わからない」を素直に共有できる関係性が生まれました。私自身も、自分の感じたことや考えたことを安心して表現できるようになり、仕事に対するモチベーションが以前よりずっと高まりました。
小さな一歩が未来を変える
私の体験は、心理的安全性が単に「仲が良い」といった表面的なものではなく、チームの成果や個人の成長に直結するものであることを教えてくれました。異なる意見や疑問を安心して表現できる環境は、イノベーションを生み、問題を早期に発見し、チーム全体の学習能力を高めます。
もしあなたが今、「だいたい賛成です」と心の中でモヤモヤしながら言ってしまうことが多いなら、それは決してあなただけではありません。多くの人が、同じように自分の意見を表現することにためらいを感じています。
しかし、私の体験から一つお伝えできることがあるとすれば、それは「小さな一歩」の重要性です。全てを変えようとする必要はありません。まずは、あなたが感じた小さな違和感や、素朴な疑問を、信頼できる同僚やリーダーにそっと話してみることから始めてみるのはいかがでしょうか。
あなたの「違う視点」は、あなたが思っている以上に、チームにとって価値あるものである可能性があります。そして、その小さな一歩が、あなた自身の職場での安心感や、チームの未来を大きく変えるきっかけになるかもしれません。心理的安全性の高い環境は、誰かが一方的に与えてくれるものではなく、私たち一人ひとりの小さな行動によって育まれていくものだと、私は信じています。