心理的安全性ストーリー

誰にも質問できなかった私が、チーム全員と「知りたい」を共有できるようになった話

Tags: 心理的安全性, 質問, コミュニケーション, チームワーク, 成長

質問をためらっていた頃の私

新しい仕事やプロジェクトが始まると、分からないことだらけになります。特に経験の浅い頃は、先輩や上司が当たり前のように話す専門用語や、業務フローの中で疑問に思うことが頻繁にありました。

しかし、私はなかなか質問することができませんでした。「こんな簡単なことも知らないのかと思われるのでは?」「忙しそうなのに、時間を取らせて申し訳ない」「前に聞いたかもしれない…」そんな考えが頭をぐるぐる回り、結局、一人で抱え込んでしまうことがほとんどでした。

分からないまま進めることによるミスも増え、その度に自己嫌悪に陥りました。周りのメンバーが活発に議論している様子を見るたびに、自分だけが取り残されているような、チームの中に壁を感じることもありました。発言すること以前に、疑問を口にすることすらハードルが高かったのです。このままではいけない、もっと気軽に質問できるようになりたい、と強く感じる日々でした。

小さな失敗が気づかせてくれたこと

そんな私が変わるきっかけとなったのは、あるプロジェクトでの小さな失敗でした。先輩からの指示の意図を正確に理解できていなかったことが原因だったのですが、私は質問をためらい、曖昧な理解のまま作業を進めてしまったのです。結果として、やり直しが発生し、チーム全体のスケジュールに影響を与えてしまいました。

その時、先輩は私を責めるのではなく、こう言ってくれたのです。「分からなかったら、いつでも聞いてくれていいんだよ。後からやり直す方が、みんなにとって負担になるから。最初は誰だって分からないことばかりだよ。」

その言葉に、私の心は少し軽くなりました。同時に、私が質問をためらったことで起きた結果を目の当たりにし、「分からないことを隠すこと」の方が、よほどチームに迷惑をかけるのだと痛感しました。

この出来事を機に、チーム内で「どんな小さなことでも、分からないことはその場で確認しよう」「質問するのは恥ずかしいことじゃない」という共通認識を持とう、という動きが生まれました。リーダーも「質問は大歓迎です。むしろ、疑問点があれば積極的に共有してください」と、私たちに心理的な安心感を与えてくれるようになりました。

一歩踏み出し、変わった景色

チームの雰囲気の変化と、先輩の温かい言葉に後押しされ、私も少しずつ質問をしてみることにしました。最初は、「〇〇という理解で合っていますか?」といった簡単な確認から始めました。驚いたことに、誰も私を「無知だ」と嘲笑するようなことはありませんでした。むしろ、「いい質問だね」「そこ、分かりにくいよね」と丁寧に教えてくれたり、他のメンバーも同じ疑問を持っていたことが分かったりしました。

質問をすることで、曖昧だった知識が明確になり、業務をよりスムーズに進められるようになりました。また、他のメンバーがどのように考えているのか、何に困っているのかを知る機会も増え、一方的に教わるだけでなく、チーム全体の状況を理解し、自分も貢献できているという感覚が生まれました。

さらに嬉しい変化は、質問を通じてメンバー間のコミュニケーションが増えたことです。ある人の質問をきっかけに、関連する情報が共有されたり、新しいアイデアが生まれたりする場面が増えました。以前はどこか壁があったように感じていたチームが、「知りたい」という共通の探求心を通じて、一体感を増していったのです。私自身も、以前のように一人で抱え込むことはなくなり、「これはどうだろう?」「〇〇について、みんなで考えてみませんか?」と、自然と疑問やアイデアを投げかけられるようになりました。

「知りたい」を共有できるチームが強い

私の体験を通して実感したのは、質問を歓迎し、「知りたい」という気持ちをオープンにできる環境が、いかに個人とチームの成長にとって重要かということです。

もちろん、何もかも無計画に質問すれば良いというわけではありません。自分で調べられることは調べる、相手の状況を伺って話しかけるといった配慮は必要です。しかし、「こんなこと聞いたらバカだと思われるかも」という恐れから質問をためらってしまうのは、自分自身の学びの機会を奪うだけでなく、チーム全体の可能性を狭めてしまうことにも繋がります。

もし今、職場で質問することにためらいを感じている方がいたら、まずは小さな一歩から踏み出してみてはいかがでしょうか。「〜について教えていただけますか?」といった簡単な質問から始めるのも良いでしょう。そして、もしあなたがチームの中で質問を受ける立場なら、「質問してくれてありがとう」という感謝の気持ちを伝え、丁寧に答えることを心がけてみてください。

「知りたい」という純粋な好奇心や探求心が、チームの中で自由に飛び交うようになった時、そこにはきっと、想像を超える変化が待っているはずです。それは、単に業務効率が上がるだけでなく、メンバー一人ひとりが安心して貢献でき、共に学び、成長していける、温かいチーム文化を育む第一歩となるでしょう。