本音で話せなかった私が、職場で「自分らしさ」を取り戻すまで
職場の「仮面」に息苦しさを感じていませんか
毎日の仕事、本当の自分を出せずに、どこか無理をしていませんか？会議で賛成しつつも、内心では違う意見を持っていたり、頼まれた仕事を断りきれずに抱え込んでしまったり。周囲に合わせすぎて、自分の考えや感情を押し殺してしまう。そんな経験は、もしかするとあなただけではないかもしれません。
「心理的安全性」という言葉は知っていても、「それが自分の職場で実現できるなんて」「どうすれば良いのか分からない」と感じている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、心理的安全性の高い環境は、決して特別な場所だけのものではありません。一人ひとりの小さな変化や、チームでのちょっとした意識の変化から生まれることがあります。
今回は、かつて職場で「本音」を出すことに強い抵抗を感じ、息苦しさを抱えていた一人のビジネスパーソンの体験談をご紹介します。彼女がどのようにして「自分らしさ」を取り戻し、職場の空気が変わっていったのか。そのリアルなストーリーから、共感や、あなた自身の職場を変えるヒントを感じ取っていただけたら幸いです。
「良い人」でい続けた私の限界
私が以前働いていた職場は、表面上は和やかな雰囲気でしたが、どこか本音で話すのが難しい空気がありました。特に私は、入社以来ずっと「良い人」でいようと努めていました。周りの意見に賛成し、頼まれれば「はい、やります」と二つ返事。自分の意見を言うときは、それが皆と違う考えだと、言い淀んでしまうことがほとんどでした。
なぜなら、否定されるのが怖かったからです。自分の意見が間違っていると思われたらどうしよう、チームの輪を乱してしまうのではないか、そんな不安が常にありました。結果として、会議では沈黙を守り、自分の懸念やアイデアを話すことはありませんでした。
上司や同僚との関係も、あたり障りのない会話に終始しました。「本当はこう思っているのに」「このやり方には疑問があるな」と感じても、それを口にすることはなく、心の中にしまい込みました。仕事量が増えても「大変です」と言えず、一人で抱え込んで終電を逃す日々。その頃の私は、まるで笑顔の仮面をかぶって仕事をしているような感覚でした。
次第に、仕事へのモチベーションは低下していきました。「これは本当に自分がやりたかったことだろうか」「何のために働いているんだろう」そんな疑問ばかりが頭を巡るようになりました。心身ともに疲れ果て、「このままではいけない」と漠然と感じ始めていました。
小さな「本音」を試す勇気
そんな私に変化のきっかけが訪れたのは、あるプロジェクトでのことでした。私の内心の懸念を無視して進めた結果、顧客から大きなクレームを受けてしまったのです。あの時、ほんの少しでも「私は〇〇という点が気になっています」と伝えていれば、違った結果になったかもしれない。強く後悔しました。
この失敗を機に、私は「もう『良い人』でいるのはやめよう。少しでも本音を出してみよう」と決意しました。もちろん、すぐに大胆な行動ができたわけではありません。最初はとても小さなことから始めました。
例えば、チーム内のチャットで、誰かの意見に対して「〜という視点も考えられますね」と、控えめに自分の意見を付け加えてみました。会議では、皆が賛成している時に、どうしても引っかかる点があったら、短く「一点だけ確認させてください」と発言してみました。
最初は心臓がドキドキして、声が震えそうになりました。でも、意外にも否定的な反応はありませんでした。むしろ、「確かにそういう側面もありますね」「その点は見落としていました、ありがとう」といった肯定的な言葉が返ってきたのです。
また、一人で抱え込んでいた仕事の一部について、「正直、この部分は少し苦手で、〇〇さんにコツを教えていただけると助かります」と、勇気を出して同僚に頼ってみました。すると同僚は快く応じてくれ、スムーズに仕事が進んだだけでなく、会話が増えて以前より距離が縮まったように感じました。自分の「苦手」を見せても、関係性が壊れるどころか、むしろ深まることもあるのだと知りました。
「本音」が連鎖して生まれた変化
私が小さな本音を出すようになったことは、少しずつですが周囲にも影響を与え始めました。私が懸念を口にしたことで、他のメンバーも「実は私も気になっていたんです」と発言しやすくなったり、誰かが助けを求める声を聞いて、「私も手伝いますよ」と自然と声がかかるようになったりしました。
以前は当たり障りのない会話ばかりだったチーム内に、仕事の課題について真剣に話し合ったり、時にはプライベートな軽い相談をしたりと、少しずつですが本音で話せる安心感が生まれてきたのです。
私自身も、仮面を外したことで、肩の荷が下りたように感じました。自分の得意なことや、本当に興味のある分野について話す機会が増え、周りもそれを理解してくれるようになりました。すると、自分の強みを活かせる仕事を任されることも増え、仕事へのモチベーションが自然と湧いてくるようになったのです。
心理的安全性は、誰か一人が作るものではなく、お互いがほんの少しずつ心を開き、本音を受け止め合うことの積み重ねで育まれるのだと感じました。「言っても大丈夫」という小さな安心感が、自分自身を解放し、チーム全体の可能性を広げる鍵になることを、身をもって体験しました。
自分らしさを肯定できる場所へ
もしあなたが今、職場で本音が出せずに息苦しさを感じているなら、それはあなたが弱いからではありません。心理的安全性がまだ十分に育まれていない環境にいるのかもしれません。
しかし、状況は必ず変えられます。大きな変化を一度に起こそうとする必要はありません。まずは、心の中で感じている小さな違和感を、信頼できる同僚や上司にそっと打ち明けてみる、という小さな一歩から始めてみませんか。完璧な自分でなくても良い、苦手なことがあっても良い、と自分自身に許可を与えてみましょう。
あなたの小さな一歩が、職場の空気を変えるきっかけになるかもしれません。そして何より、自分自身の心を開放し、「自分らしさ」を肯定しながら働くことができるようになるはずです。
心理的安全性は、自分らしく、より豊かなキャリアを築くための土壌となります。この記事が、あなたが職場で「自分らしさ」を取り戻し、さらに輝くための小さな希望となれば嬉しいです。