心理的安全性ストーリー

抱え込みグセを卒業!「助けて」と言えた職場で見つけた心の余裕

Tags: 心理的安全性, チームワーク, 職場環境, 体験談, 助け合い

一人で頑張りすぎていませんか?

職場での仕事に、どこか息苦しさを感じてはいませんか。誰かに相談したいけれど、迷惑をかけたくない。質問したら、無能だと思われてしまうのではないか。そんな風に考えてしまい、つい一人で抱え込んでしまうことはありませんか。

私自身も、以前はまさにそうでした。任された仕事は、どんなに困難でも、何としてでも自分一人でやり遂げるべきだと思っていました。それは、周りに弱みを見せたくないという気持ちや、「自分で解決できてこそ一人前」という固定観念があったからです。結果として、常に心に余裕がなく、疲弊しているような状態でした。ミスをした時も、隠そうとして事態を悪化させてしまうこともありました。

そんな私が、「助けてください」と素直に言えるようになり、職場に対する見方や働き方が大きく変わった体験をお話ししたいと思います。これは、特別な誰かが劇的に変えてくれた話ではなく、ごく普通のチームの中で、少しずつ心理的安全性が育まれていったストーリーです。

「抱え込みグセ」が招いた失敗と、小さな変化の兆し

以前の職場で、私はまさに「抱え込みグセ」の塊でした。新しい業務を任されても、分からないことを聞けず、ネットで調べたり、手探りで進めたりしていました。期日が迫り、どうにもならなくなってから、ようやく重い口を開く、という状況でした。その度に、上司や同僚に迷惑をかけてしまい、自己嫌悪に陥るという悪循環を繰り返していました。

「もっと早く言ってくれれば」「なぜ一人で抱え込んだんだ」という言葉を直接言われたわけではありませんが、申し訳なさからくるプレッシャーは相当なものでした。その経験から、「やはり一人でやるしかない」という気持ちがさらに強固になっていきました。

現在の職場に移ってからも、その傾向はしばらく続きました。しかし、少しずつ以前とは違う雰囲気を感じるようになりました。例えば、ミーティング中に誰かが「ここ、正直よく分からないのですが…」と質問しても、誰も否定的な態度をとらないこと。むしろ、「ああ、そこ難しいよね」「私も最初はつまづいたよ」といった共感や、「こういう情報を見るといいよ」という具体的なアドバイスが自然と飛び交う光景を目にするようになったのです。

また、ある日、他のチームの人が忙しそうで、少し心配そうにしているのを見かけた別の人が、「何か手伝えることある?」と気軽に声をかけている場面がありました。そして、手伝ってもらった側が心から感謝を伝えている様子が、私の目に留まりましたのです。

そうした小さなやり取りを目にするたびに、「ここでは、助けを求めることがそんなにいけないことではないのかもしれない」「助け合うことが当たり前なのかな」という思いが、私の心の片隅に芽生え始めました。

勇気を出して「助けてください」と言えた日

変化は、あるプロジェクトで私が担当していたタスクが、どうにも行き詰まってしまった時に訪れました。締め切りは目前でしたが、想定外のトラブルが発生し、一人では解決の糸口すら見つけられない状況に陥ってしまったのです。過去の私なら、徹夜をしてでも、どうにか一人で解決しようと必死になったでしょう。そして、おそらく失敗していたと思います。

しかし、あの時、これまでの職場の雰囲気や、同僚が助け合っている光景が頭をよぎりました。「もしかしたら、ここでは頼ってもいいのかもしれない」という、小さな希望が生まれました。心臓がバクバクしましたが、意を決して、チームのリーダーにメッセージを送りました。

「大変恐縮なのですが、今担当している〇〇の件で、予期せぬ問題が発生しており、一人で解決するのが難しい状況です。もし可能であれば、どなたかにご相談させていただけますでしょうか。」

送信ボタンを押した後は、不安でいっぱいでした。「やっぱり迷惑だって思われるかな」「怒られるかな」。しかし、すぐにリーダーから返信が来ました。

「大丈夫ですか?状況をもう少し詳しく教えてください。必要なら、△△さん(別の詳しいメンバー)にも入ってもらって、一緒に考えましょう。」

責める言葉は一切ありませんでした。むしろ、心配してくれる温かい言葉でした。その後、リーダーと△△さんがすぐに時間を取ってくれ、私の状況を丁寧に聞いてくれました。私がどこでつまづいているのかを一緒に整理し、解決のための具体的な道筋を示してくれただけでなく、一時的に一部のタスクを分担してくれることになったのです。

その時、私の心に広がったのは、安堵感と、チームへの深い感謝の気持ちでした。「一人で抱え込まなくてよかった」「頼って本当に良かった」と、心から思いました。

「助けて」と言えることで見えた景色

この出来事を境に、私の働き方は大きく変わりました。分からないことがあれば、一人で悩まずに素直に質問できるようになりました。困難なタスクに直面しても、抱え込まずにチームメンバーに相談し、協力を仰げるようになりました。

すると驚くほど、仕事の効率が上がったのです。一人で何時間も悩んでいたことが、誰かに少し質問するだけであっさり解決したり、他の人の知見を借りることで、自分だけでは思いつかなかったより良い方法が見つかったりしました。

そして何より、心に大きな余裕が生まれました。一人で全ての責任を背負い込まず、「チームで仕事をしているんだ」という感覚を持つことができるようになったからです。失敗への恐れも和らぎました。なぜなら、たとえ自分が失敗しても、チームがフォローしてくれるという信頼感が生まれたからです。それは、私が「助けて」と言えた時に、チームが受け入れてくれた経験から生まれた信頼でした。

また、自分が助けを求められるようになっただけでなく、チームメンバーが困っている時には、「何か手伝いましょうか」と声をかけることも自然とできるようになりました。助けてもらうだけでなく、助ける側にもなることで、チームの一員であるという繋がりをより強く感じられるようになりました。

小さな一歩が、息苦しさを溶かす

この経験を通して、心理的安全性の重要性を肌で感じました。「助けて」と言える環境は、個人の能力を最大限に引き出すだけでなく、チーム全体の生産性や創造性を高めることにも繋がるのだと実感しています。それは、特別な何かが必要なのではなく、日々の小さなコミュニケーション、お互いを尊重し合う態度、そして、誰かが困難な状況にあるときに手を差し伸べようとする意識から生まれるものだと思います。

もし今、あなたが職場で一人で抱え込み、息苦しさを感じているのであれば、もしかしたら、あなたのチームにも心理的安全性を育む余地があるのかもしれません。もちろん、環境を変えることは簡単なことではありません。しかし、もしかしたら、あなた自身がほんの少しの勇気を持って、「これについて少し教えていただけますか」「この件、少し相談に乗っていただけませんか」と小さな一歩を踏み出すことで、何かが変わり始めるかもしれません。

かつての私のように、助けを求めることに抵抗がある方へ伝えたいのは、それは決して恥ずかしいことでも、弱いことでもないということです。むしろ、チームで成果を出すためには、とても大切な、勇気ある行動なのだということです。

そして、あなたが小さな一歩を踏み出したとき、それを受け止めてくれる温かい反応が返ってくることを、心から願っています。そしてもし、あなたの周りで困っている人がいたら、ぜひ「何か手伝えることはありますか?」と声をかけてみてください。そうしたお互いを思いやる小さな行動の積み重ねが、やがて職場の息苦しさを溶かし、誰もが安心して、自分らしく働ける環境を育んでいくのだと信じています。