孤立していた私が、チームに「居場所」を見つけた話 ～心理的安全性が生んだ繋がり～
職場に「居場所がない」と感じていませんか
職場で、ふとした瞬間に孤立感を感じることはありませんか。会議中に誰も発言しない沈黙の時間、休憩時間の楽しそうな雑談の輪に入れなかった時の寂しさ、あるいは「これを言ったら浮いてしまうかな」と考えて、意見を飲み込んでしまう瞬間。
もしあなたが今、職場に漠然とした息苦しさを感じ、「自分はチームの一員ではないのかもしれない」と感じているとしたら、それは決してあなただけではありません。多くの人が、多かれ少なかれ同じような悩みを抱えています。
この記事では、かつて職場で孤立を感じていた一人のビジネスパーソンが、心理的安全性という概念を知り、小さな行動を積み重ねることで、チームの中に確かな「居場所」を見つけた体験談をご紹介します。
会議で言葉を飲み込んだ日々、そして小さな問いかけ
私が以前の職場で働き始めた頃、チームの雰囲気はとても静かでした。会議では必要最低限の報告のみが行われ、新しいアイデアや懸念事項を率直に話し合う空気はありませんでした。何か疑問があっても、「こんな簡単なことを聞いて馬鹿だと思われたらどうしよう」「忙しいのに時間を取らせてしまうのは申し訳ない」と考えてしまい、質問することをためらっていました。
チームメンバーとの個人的な繋がりも薄く、業務以外の会話はほとんどありません。お昼休憩も、それぞれがデスクで黙々と食事をするか、少人数のグループで固まっているかのどちらかでした。私はどちらにも属せず、いつも一人で過ごしていました。
この状況が続くと、次第に「自分はチームに貢献できていないのではないか」「ここにいてもいなくても同じではないか」という気持ちになり、職場への足が重くなっていきました。自分の意見や感情を表に出すことは、ますます難しく感じられました。まさに、チームの中に「居場所がない」と感じていたのです。
そんなある日、ある研修で「心理的安全性」という言葉を知りました。それは、「チームの誰もが、自分の考えや気持ちを、誰に対しても安心して発言できる状態」だと説明されていました。私が感じていた息苦しさや孤立感は、まさに心理的安全性が低い状態だったのだと気づきました。
同時に、「心理的安全性は、リーダーだけが作るものではなく、チームの一人ひとりの小さな行動の積み重ねによって育まれる」という話を聞き、私にもできることがあるのかもしれない、と少しだけ希望を感じました。
何から始めれば良いか分かりませんでしたが、まずはごく小さなことから始めてみようと思いました。
「これ、ちょっといいですか？」小さな一歩が壁を溶かし始めた
私が最初に試みたのは、チームメンバーへの「小さな問いかけ」でした。これまでは、分からないことは自分で調べるか、諦めるかのどちらかでしたが、勇気を出して隣の席の先輩に「すみません、これってどうすればいいんでしょうか」と尋ねてみました。
先輩は、少し驚いた様子でしたが、すぐに手を止めて、とても丁寧に教えてくれました。その時、「ああ、聞いても大丈夫なんだ」と心から安心したのを覚えています。
それから、私は少しずつ、他のメンバーにも話しかけるようになりました。業務に関する簡単な質問から、「今日のランチ、どこに行きますか？」といった他愛ない会話まで、ほんの少しずつ、です。最初は緊張しましたが、ほとんどの人が嫌な顔をせず、応じてくれました。
また、これまで隠していた「分からない」を素直に言うようにしました。例えば、新しいツールについて皆が理解しているように見えても、自分がついていけていないと感じたら、「すみません、今の部分、もう一度教えていただけますか。正直、まだよく分かっていなくて」と伝えてみました。すると、他のメンバーから「私も同じです」「この部分は分かりにくいですよね」といった声が上がり、皆で助け合う雰囲気が生まれ始めたのです。
さらに、他のメンバーの良いところや、助けてもらったことに対して、具体的に感謝を伝えることも意識しました。「〇〇さんがこの前教えてくださったおかげで、スムーズに進みました。ありがとうございます」と伝えると、相手も嬉しそうで、自然と会話が生まれることが増えました。
これらの行動は、どれも劇的な変化ではありませんでした。しかし、一つ一つ積み重ねるうちに、チーム内の空気が少しずつ変わっていくのを感じました。私が質問したり話しかけたりすることに対して、メンバーが以前よりオープンになってくれたように感じたのです。
「居場所」が生まれたとき、見えた景色
小さな一歩を踏み出し続けることで、私自身にも変化が訪れました。会議で小さな質問や意見を言えるようになり、それを否定されることはありませんでした。むしろ、「なるほど」「そういう視点もありますね」と受け止めてもらえることが増え、自分の発言がチームの役に立つかもしれない、と思えるようになりました。
休憩時間には、自分から他のメンバーに話しかけたり、誘ってもらったりして、一緒に過ごす時間も増えました。業務とは関係のない、個人的な話で笑い合うこともありました。
以前はチームの中に一人でいる感覚が強かったのですが、少しずつ、自分もこのチームの一員なのだ、と感じられる瞬間が増えていきました。失敗を恐れずに「分からない」と言えること、自分の意見を少しずつ出せること、そして何より、チームメンバーとの間に小さな繋がりが生まれたことが、私に「居場所」を与えてくれたのです。
この体験を通して、心理的安全性は、最初から完璧な状態で存在しているのではなく、チームの一人ひとりが、不安や恐れを乗り越えて、小さな勇気を出すことによって育まれるのだと実感しました。そして、その小さな一歩が、孤立感を解消し、自分らしい「居場所」を作る力を持っていることも知りました。
小さな一歩が、あなたの「居場所」を作るかもしれない
心理的安全性は、一部の特別なリーダーやチームだけのものではありません。私たち一人ひとりが、自分の内にある「言いにくい」「聞きにくい」「頼みにくい」といった壁に、少しずつ向き合っていくことから始まります。
完璧な職場を待つのではなく、自分自身が心理的安全性を意識した小さな行動を始めてみることが、状況を変えるきっかけになるかもしれません。それは、簡単な質問をしてみることかもしれないし、誰かに感謝を伝えてみることかもしれません。あるいは、自分の弱みを少しだけ開示してみることかもしれません。
もし今、あなたが職場で孤立感を感じていたり、自分の「居場所がない」と感じていたりするなら、この体験談が、ほんの少しでもあなたの希望となれば幸いです。小さな一歩を踏み出す勇気が、きっとあなたを、そしてチームを、より良い場所へと導いてくれるはずです。
あなたも、あなたらしい「居場所」を、職場で見つけられますように。