自分の弱みをさらけ出したら、チームが強くなった話
完璧を装うことの息苦しさ
「ちゃんとしなきゃ」「できる人に見られなきゃ」。職場にいると、ついついそう思って肩に力が入ってしまうことはありませんか。特に新しい環境や、経験の浅い分野では、自分の至らない部分や分からないことを隠して、完璧な自分を演じようとしてしまいがちです。
私も以前はそうでした。新しいプロジェクトにアサインされた時、未知の技術要素が含まれていて、正直なところ自信がありませんでした。しかし、周りは皆テキパキと仕事をこなしているように見え、今さら「これ、よく分からないんです」とは言えませんでした。
分かったふりをして資料を眺め、一人で抱え込み、インターネットで必死に調べました。でも、時間ばかりが過ぎ、タスクは一向に進みません。不安と焦りがどんどん募り、精神的にも追い詰められていきました。チームメンバーとの会話も、当たり障りのない内容ばかり。自分の内側にある「分からない」「怖い」といった弱さを見せることが、とにかく怖かったのです。もし弱みを見せたら、評価が下がる、信頼を失う、迷惑をかけてしまう、そう考えていました。
勇気を出した、たった一つの告白
状況が改善しないまま数日が過ぎ、納期が迫ってきました。もうどうにもならない、このままではプロジェクトに穴を開けてしまう、という危機感を感じました。その時、ふと「もう、ダメ元で正直に話してみようか」という思いが頭をよぎりました。完璧を装うのも、一人で抱え込むのも、限界だったのです。
チームの定例ミーティングの後、少しだけ時間をもらい、思い切って正直な気持ちを話しました。
「すみません、実はこの技術、経験がなくて、調べながら進めているんですが、なかなか理解が進まず遅れてしまっています。もし、詳しい方がいれば、少しだけ時間をいただけないでしょうか…」
声が震えていたのを覚えています。顔を上げるのが怖くて、俯き加減でした。怒られるだろうか、呆れられるだろうか、そう思っていました。
しかし、返ってきた言葉は、予想とは全く違うものでした。
「ああ、そうだったんですね!言ってくれてありがとう。その技術なら、ちょうど山田さんが詳しいですよ。山田さん、ちょっと手伝ってもらえませんか?」
リーダーは驚くほどあっさりと、そして温かく私の告白を受け止めてくれたのです。そして、快く引き受けてくれた山田さんも、「大丈夫だよ、最初は誰でも分からないことだらけだし。一緒に見てみようか」と優しく声をかけてくれました。
弱みを見せることで生まれた、チームの変化
その日を境に、私の状況は劇的に変わりました。山田さんは快く技術的な疑問に答えてくれ、他のメンバーも「何か困ってることない?」と声をかけてくれるようになりました。一人で抱え込んでいたタスクは、チームで協力して進めることができるようになり、納期に間に合わせることができました。
それ以上に大きな変化は、チーム全体の空気でした。私が弱みを見せたことで、「完璧でなくてもいいんだ」という安心感が生まれたように感じます。他のメンバーも、以前より気軽に「これ、どうしたらいいかな?」「ちょっと詰まっちゃって」と助けを求めるようになりました。得意な人が苦手な人をフォローし、互いに教え合い、協力し合う文化が自然と根付いていったのです。
会議での発言も増えました。以前は的外れなことを言ってはいけないと思い、黙っていることが多かったのですが、「分からないことは質問しても大丈夫」「失敗しても助けてもらえる」という安心感があるため、積極的に意見や疑問を口にできるようになりました。私の小さな「弱みを見せる」という一歩が、チーム全体の心理的安全性を高めるきっかけになったのかもしれません。
完璧でなくても、大丈夫
この経験を通して、私は「完璧であること」よりも「正直であること」の方が、はるかに大切で、そして強いのだということを学びました。自分の弱みを見せることは、確かに勇気がいります。でも、それは決して恥ずかしいことではなく、むしろチームとの間に信頼を築き、より良い関係性を育むための第一歩になり得るのです。
もし今、あなたが職場で「ちゃんとしなきゃ」と一人で抱え込み、息苦しさを感じているなら。ほんの少しだけ、勇気を出して自分の「分からない」や「難しい」を誰かに打ち明けてみてはいかがでしょうか。もしかしたら、私のように、予想外の温かい反応と、そこから始まるチームの変化を体験できるかもしれません。
弱さを認め、分かち合うことで、あなた自身も、そしてあなたのチームも、もっと強く、もっと温かい場所になっていくはずです。完璧でなくても、大丈夫。一人で抱え込まず、頼る勇気を持つこと。それが、心理的安全性を築く小さな、でも確実な一歩なのだと信じています。