心理的安全性ストーリー

「変な人」と思われたくなかった私が、チームで「ユニークなアイデア」を受け入れられるようになった話

Tags: 心理的安全性, アイデア創出, チームワーク, 発言しやすい環境, 共感

周りと同じでなければ、と無意識に思っていた私

会議やチームの打ち合わせで、他の人とは少し違う考えが頭に浮かぶことがあります。それはもしかしたら、新しい視点だったり、既存のやり方への疑問だったりするかもしれません。でも、そんな時、「これを言ったら、変に思われるかな」「みんなと違う意見で浮いてしまうのは嫌だな」と、言葉にするのをためらってしまうことはありませんか。

私も以前は、そんな風に感じていました。特に、アイデア出しのような場では、「普通」の意見や、既に誰かが言った意見に沿った形でしか話せない自分がいました。ユニークな発想が浮かんだとしても、それは「現実的ではない」「突飛すぎる」と自分で蓋をしてしまうのです。

「変な人」「空気が読めない人」と思われたくない。そんな思いが強く、周りの意見に合わせてしまう。漠然とした息苦しさを感じながらも、それが当たり前だと思っていました。そんな私が、自分の「ユニークなアイデア」を安心して出せるようになったチームでの体験をお話しします。

恐る恐る口にした「変なアイデア」と、予想外の反応

私が所属していたチームは、かつては比較的穏やかではありましたが、新しいアイデアや前例のない提案に対しては、どこか慎重な雰囲気がありました。失敗を恐れる気持ちや、「これまでこうだったから」という意識が、無意識のうちにチームの挑戦を阻んでいたように思います。

私自身も、何か新しいことを提案するたびに、「でも、それは難しいですよね」「コストがかかりすぎませんか」といった反応を予測してしまい、結局は当たり障りのない意見しか言えませんでした。心の中では、「もっと面白くできるのに」「別の角度から考えれば」と思っていても、それを表現する勇気が持てなかったのです。

そんなある日、新しいプロジェクトの企画会議がありました。いつものように、無難なアイデアがいくつか出ている中で、ふと、今まで誰も考えつかなかったような、少し突飛なアイデアが頭に浮かびました。正直、それを口にするのはかなり躊躇しました。きっと、「何それ?」とか「無理だよ」と言われるだろう、と。

それでも、その日の会議の冒頭で、リーダーが「今日は、どんな小さなことでも、どんな突飛なことでも構いません。自由にアイデアを出してみましょう」と、いつもより強く発言を促していたこと、そして、他のメンバーの一人が、冗談めかして少し変わった意見を言ったときに、誰も否定せずに笑いが起きたことが、私の背中を少しだけ押してくれました。

意を決して、私は自分のアイデアを話し始めました。声が少し震えていたかもしれません。「あの、ちょっと変なアイデアかもしれないんですけど…」と前置きをして、頭の中でぐるぐる考えていたことを言葉にしました。

話し終えた後、一瞬の沈黙がありました。ああ、やっぱり失敗したかな、変な空気にしてしまったかな、と私は内心焦りました。

しかし、次に続いたのは、予想もしなかった反応でした。

「え、それ面白いね!」「確かに、その視点はなかった」「どうやって実現するかはさておき、発想はすごく斬新だ」

リーダーもメンバーも、私のアイデアを頭ごなしに否定するのではなく、まずはその面白さや新しい視点を評価してくれたのです。もちろん、実現可能性についての議論は始まりましたが、それは「無理だ」という結論ありきではなく、「どうしたら実現できるだろう?」という前向きな問いかけでした。

小さな一歩が変えたチームの空気

この出来事は、私にとって大きな転換点となりました。自分の「ユニークさ」を恐れる必要はないのかもしれない、と思えたからです。そして、他のメンバーも、私のアイデアに対するチームの反応を見て、少しずつ変化していったように感じます。

それまで「普通」の意見しか言わなかったメンバーが、心の中に温めていたであろう、少し変わったアイデアを口にするようになりました。会議では、多様な意見が飛び交うようになり、議論はより活発に、そして面白くなっていきました。

もちろん、全てのアイデアが採用されるわけではありません。却下されることもありますし、意見がぶつかることもあります。しかし、重要なのは、アイデアが出たことそのものが否定されない、ということです。たとえ「今回は見送ろう」となっても、「面白い視点をありがとう」「次に活かそう」といった言葉が添えられるようになりました。

この変化を通して、私は心理的安全性が、単に「失敗を恐れない」ことだけでなく、「人との違い」や「ユニークな発想」を安心して表現できる環境を育むことでもあるのだと実感しました。

「変」を恐れず、自分らしさを出すヒント

この経験から学んだことはたくさんあります。

まず、「完璧なアイデアでなくても、まずは口にしてみる勇気」が大切だということ。最初の一歩は怖いですが、小さな一歩が現状を変えるきっかけになります。

次に、「他者のユニークな意見を否定せず、一度受け止めてみる姿勢」が、チーム全体の安心感を高めるということです。たとえ自分にはない発想でも、「面白いね」「そういう考え方もあるんだ」と肯定的な反応をすることで、相手は「このチームで発言しても大丈夫だ」と感じます。

そして、「リーダーや他のメンバーが、どんな意見も歓迎する雰囲気を作る」ことの重要性です。リーダーだけでなく、メンバー一人ひとりが「変な意見なんてないよ」「どんなことでも話してみて」という姿勢を示すことで、心理的な壁は確実に低くなります。

もしあなたが、かつての私のように「変な人」と思われたくない、他の人と同じでなければ、と感じているなら、大丈夫です。あなたの心の中にあるユニークなアイデアや視点は、チームにとって大きな価値になる可能性があります。

まずは、信頼できる誰かにそっと話してみることから始めても良いでしょう。あるいは、チームの誰かが少し変わった意見を言ったときに、「それ面白いね!」と肯定的な反応を返すことから始めても良いかもしれません。

小さな一歩が、あなた自身の心の息苦しさを減らし、そしてチーム全体の空気を変えていく力になります。あなたの「ユニークさ」が、チームの新しい可能性を開く鍵になることを、私の経験からお伝えできれば幸いです。